Research
デュアルコム分光法の研究

デュアルコム分光法は、わずかに異なる繰り返し周波数を持つ二つの光コム光源(デュアルコム)を用いて、広帯域の光スペクトル情報を高速に取得する革新的な分光技術です。
私たちの研究室では、このデュアルコム分光システムをモード同期ファイバレーザーを基盤として自作しています。システムの主な特徴は以下の通りです。
システム構成:
わずかに異なる繰り返し周波数を持つ2つのファイバコムを干渉計を介して光路に導入します。一方を基準コムとして、もう一方の周波数を精密に制御することで、安定したデュアルコム光源を構築します。
ガス分子の吸収スペクトル測定:
広帯域の光を測定対象のガスに照射し、ガスによる吸収スペクトルを観測します。
高速・高感度測定:
2つの光コムが干渉することでRF(ラジオ波)帯域のビート信号が発生します。この信号を測定することで、光領域の広帯域情報をRF領域に変換し、高速かつ高感度なデータ取得を実現します。
解析手法の開発
温度推定
Rotational-State Distribution Thermometry(RDT法)は、分子の回転エネルギー準位の分布を解析することでガス温度を求める分光学的手法です。レーザー吸収分光で得られる複数の回転遷移の吸収強度を比較し、その相対強度分布から温度を導きます。濃度推定
吸収スペクトルの強度から、ガス分子の濃度を定量的に評価します。
ガス種同定
観測された吸収線の波長を既存の分子吸収スペクトルデータベースと照合し、未知ガスを同定します。
この研究は、産業プロセスの監視、環境モニタリング、医療診断など、多様な分野での応用が期待されます。私たちは、自作ファイバーコムを核としたデュアルコム分光技術の高性能化と高機能化に取り組み、その可能性をさらに拡張すべく日々研究を進めています。