Publication

Japanese Journal of Applied Physics 65, 032001 (2026)
Centerburst-based baseline reconstruction for high-accuracy normalization in dual-comb spectroscopy

Author

Naoki Takeshi, Ryusei Uchiyama, Takumi Takahoshi, Feng-Lei Hong and Yoshiaki Nakajima

Category

Peer reviewed publication

最新のデュアルコム分光法に基線補正の新戦略

— 測定精度と実用性を大きく向上させる新手法 —

近年、周波数コムを用いたデュアルコム分光法は、広帯域・高分解能・高精度という特徴から、分子スペクトルの高性能計測技術として注目を集めています。しかし実際の測定では、光源の強度変動や光学系の特性によって生じる**基線(baseline)**の変動が、スペクトルの正確な定量・定性解析の妨げになってきました。従来の基線補正法は、参照スペクトルを別途取得したり、モデル関数に当てはめたりする必要があり、実験負担や計算コストが大きいという課題があります。

そこで本研究では、基線補正の新たな実用的手法が提案されました。キーとなるのは、デュアルコム分光で得られる干渉信号(interferogram)のセンターバースト成分に注目するアイデアです。センターバーストは、光源スペクトルと光学系の伝達特性がもっとも強く現れる部分であり、ここから基線情報を直接再構成できるという点に着目しています。

 新手法の特徴

  • 参照測定不要:従来のように別途参照信号を取る必要がありません。

  • モデルフリー:モデル関数による補正やパラメータフィッティングが不要です。

  • 高精度・低コスト:フーリエ変換を2回行うだけの処理で、計算負荷が軽い。

  • 堅牢性:パラメータ調整に依存せず、さまざまな実験条件で有効です。

 実証と性能

実際の実験では、アセチレン(¹²C₂H₂)ガスの透過スペクトルを測定し、新手法を適用。従来の多項式基線フィッティング法や修正版フリーインダクションディケイ(modified free-induction-decay)法と比較して、高い一致精度が確認されました。特に、HITRANデータに基づく理論透過スペクトルとの残差(誤差)は標準偏差 0.015と良好でした。


まとめ:研究の意義

この研究は、高精度な基線補正を必要とするデュアルコム分光法の実用化に大きな一歩をもたらします。特に、装置の複雑性を増すことなく、迅速で正確なスペクトル取得ができる点が評価されています。基線変動が問題となる実験室環境だけでなく、フィールド測定や産業応用に向けた分光システムでも活用できる可能性があります。